物価と失業率(フィリップス曲線)

< 簡易解説 >

物価と失業率の関係をフィリップス曲線と言います。経済学では有名な曲線です。物価が上がれば失業率が下がることを意味します。反比例のグラフです。

上記のグラフより、物価が5%あれば、自然と失業率は底打つと考えられます。それ以上にしても、1%程度の失業者は居るように考えられ、造語ですが、このあたりが自然(な)失業率と考えられます。前年同月比すると、さらに精度は向上します。

そして、以下は時系列にしたものです。失業率は下に行くほど悪化する、と見やすさを考え、右軸の数字を反転しています。

曲線の反比例のグラフのため、もともと少々、目視では連動が見難いです。ですが、なんとなくはわかると思います。しかし、2000年以後については、物価に動きがないのに、改善を見せています。

結論から言えば、失業率の統計は壊れています(中身が変質しています)。


< 非正規が増え続けている >

2000年以降、改善を見せた失業率ですが、一方で非正規職員の割合が向上し続けました。いまや40%が非正規です。非正規では給与水準や婚姻率が低下し、国民が貧しくなります。

< 2002年以降、派遣が激増している >

さらに内訳に注目すれば、派遣が圧倒的に増加したことがわかります。そして、リーマンショックで簡単にクビを切られていることがわかります。今代増えた派遣というのは、もともとそういう意図で広がりましたから、不思議ではありません。

とはいえ、非正規のうち、派遣というのは、実数では少数です。高齢化により、契約社員や食卓、パート・アルバイトが多いと言えます。

 簡単に言えば、長引く不景気で、定年後の貯金が少なく、働かざるを得ない。または、同様の理由で少子化が進み、労働が求められる、といったところかと思います。日本では90歳の方がコンビニでアルバイトをしている、というニュースが報じられ、外国人が驚いている、という記事がありました。。それはそれとして、異常な派遣業界についてもう少し触れたいと思います。


< 異常に突出している日本の派遣会社の事業者数 >

人材紹介・派遣業界、物流業界の再編と今後の動向とは? 渡部 恒郎2015.11.28
https://gentosha-go.com/articles/-/1296

業界が急激に飽和する状況に何か心当たりはないでしょうか?タクシー業界しかり、弁護士業界しかり。そう、規制緩和です。2002年と言えば、小泉総理、そして竹中平蔵氏が金融担当大臣・経済財政政策担当大臣を就いていた年です。竹中平蔵は人材派遣会社パソナの社長です。あからさまな利益誘導であると言えるでしょう。出てくる政策にベストマッチした動きを会社にさせる。うまくいくのは当然です。自分で考え、自分で実行させ、自分で収穫に行くのですから。


< 本来なら政府支出で改善するはずが‥ >

先ほどの物価と失業率のグラフと似ていますが、政府支出と物価も連動するので当然です。政府支出の需要刺激から、物価も上がるのですから。詳しくは経済の流れ図を参照。

もう既にお分かりの通り、2000年以降の連動しない、不思議な改善は、非正規の増加、特に派遣の増加が多いと言えます。ですので、失業率は既に壊れてしまった、という表現にしました。とはいえ、フィリップス曲線もそうですが、政府支出と失業率を散布図にすれば、まだ正常に見受けられます。

ですので、当初の通り、物価5%を目指し、財政出動を行っていけば、国民を貧しくする派遣を必要とすることなく、失業率を1-2%台の自然な失業率に持っていけると考えられます。そのためには、単純には、上記の図を見ての通り、政府支出を前年比15%を目途に、毎年増やし続けていくことが必要と考えられます。

失業率が1%台、政府支出を15%台とは、所得倍増計画の時期であり、好景気が見込まれます。すると人手不足になる(失業率が下がる)ので、派遣よりも、お金を払ってでも、正社員雇用が求められることになるでしょう。それ以上に値段や単価(つまり物価)が上がって、どんどん儲かるのですから。

言うなれば、現代の派遣というのはデフレ商売なのです。だからパソナ竹中平蔵にとっては、国民が貧困に苦しもうが、日本は不景気の方が都合が良い、ということになります。


< 出典 >

物価@労働政策研究・研修機構(総務省 「消費者物価指数」) https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0601.html

失業率@労働政策研究・研修機構(総務省 「労働力調査」) https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0301.html

総務省統計局 労働力調査 長期時系列データ
https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html#hyo_1

政府歳出@財務省、第1表明治初年度以降一般会計歳入歳出予算決算(エクセルシートの途中で金額単位が変わるので注意)
https://www.mof.go.jp/budget/reference/statistics/data.htm



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