金融緩和と国債金利

< 日銀が国債を買う、もうひとつの理由:金融緩和 >

結論から言えば、国債市場の国債を買い集め、枯渇させることで国債金利を下げ、それに影響される民間の貸付金利を下げ、民間の貸付を増やし、GDPの投資を増やす、ためです。


これだけではわからないと思うので説明します。

現在、国債は国債市場で売っています。流れ図のページを見れば、見える化されているのでわかりやすいかと思います。

1.政府が国債を売るとき、国債市場に登録します。
2.同時に、民間サイドの人が国債を手放したいときも、国債市場に登録することになります。
3.日銀はそうした、国債市場に登録されている国債を買っています。すると、必ずしも
1.政府が売りに出した国債ばかりを買っているわけではありません。
2.民間の出した国債を買い集めているパターンもあるでしょう。
というか、現状は2.が主流です。政府が売りに出す新規国債が少ないからです。


以下のグラフを見ればわかる通り、預金取り扱い機関(つまり民間銀行)の保有国債が減って、中央銀行に移っていることがわかります。

最新の国債保有者を見てみても、わかりやすいかと思います。今では日銀が最大の国債保有者です。

< なぜ日銀は、そこまで国債を買い集めるか? >

 それは、民間の保有国債を買い取り、お金を渡すことで「もっと貸付業務がんばりなさい」という意味と共に、国債市場の登録国債を極限まで減らすことで、国債金利が下がるからです。


 逆を考えればわかりやすいです。国債が売れずにたくさんあって、ダブついていれば、国債市場の人は「少しくらい金利を高くつけても売りさばきたい」となるでしょう。つまり、国債金利が低い、というのは、国債が品薄で販売御礼状態になっている「金利をつけて売らなくてもいいや」という状態です。

そうして、国債金利が下がると、世の中の金利も下がります。

第3回】大図解!日本銀行の基礎知識 金融緩和って何?

https://cakes.mu/posts/1193

こうして、日銀が国債を買って、世の中の金利を下げようとすることを金融緩和と言います。

 例えば銀行の金利が下がったら、私たちはお金を借りやすくなり、家や車を買いやすくなりますよね。会社も土地や建物、機械を買って設備投資しやすくなります。言うなれば、GDPの投資を増やそうとしているわけです。

ここで投資というのは、民間需要もとい民間支出に含まれる足し算のひとつです。簿記的に単純に言えば、30万円の形に残るお買い物、固定資産扱いされるようなものです。

 民間支出=民間消費+民間投資

 A=B+C

そうして、わざわざお金を借りてまで、買い物がされれば、それは誰かの売上も増えたということで、景気が良くなるよね、と考えているわけです。


< しかし、金融緩和の限界、流動性の罠 >

 金利を下げると言っても、既に0%まで下がっていたら、それ以上下がりません。もし私たちがマイナスの金利で銀行からお金を借りることができたら、利子の支払いがなく、借りた方がお得になるので、みんなが限界までお金を借りてしまいますよね。

つまり、金利を下げるには限界があり、それを流動性の罠と言います。では、現在の金利は見てみると・・?


金利の基準となる国債金利。その10年満期国債の金利の推移です。10年が発売される以前は9年国債を表示しました。というわけで、1990年のバブル崩壊後、日本は1999年から、ゼロ金利政策を取り始めました。つまり、金融緩和で、限界まで金利を下げる。そして2%以下に張り付きました。

というわけで、日本はとっくに流動性の罠状態であり、これ以上の金利ダウン、金融緩和は、不可能ということがわかります。すなわち、GDPを増やすには、日銀に民間の国債を買わせるだけでは不十分なのです。

よって、GDPのページでも説明してきたように、結局は政府が新規国債を発行し、それを国債市場に卸す。そうした政府の国債を日銀に買ってもらい、財源を得る。財政出動をするしかありません。

< 出典 >

財務省、国債金利情報

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/

国債保有者@財務省、国債等関係資料、下から2番目、保有者内訳

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/

国債保有率の推移@日本銀行、時系列統計データ検索サイト、通貨量 FF資金循環の年次ストック
https://www.boj.or.jp/

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