為替レート

< 簡易解説 >
1871年に円が生まれたときには、1ドル1円でした。大東亜戦争に突入する前の1941年には1ドル4.2円。戦後は急速なインフレが続き、1ドル360円。そして固定相場制から変動相場制になるとひたすら円高が進み、100円近くまで下がりました。

戦前 円安 1円→4.2円
戦後 円高 360円→100円

なお、実効為替レートというのは、総合的な評価です。円ドル以外にも、円ユーロなど、通貨の数だけたくさんあるので、全体を見て算出されています。実質がつくと、さらに物価も加味します。なお、指数が高いと円高です。なのでグラフの縦軸の数字が反転しているのは間違っていません。


< 円安になると、価格が下がるので、日本の輸出が強くなる >

輸出されるアメリカは、自国の輸出産業が不況になります。ドル高で、価格が高く、あまり売れないからです。そして、ドル高ですから、輸入の買い物は割安ですが、アメリカ国内でも、日本の輸出品を買ってしまいます。つまり、アメリカは内需も外需も不況につながります。

というわけで、日本の円安は許されません。ひたすら円高となってきました。プラザ合意などはその最たるものです。日本の竹下登次期総理が合意してきて為替への協調介入。日本の円高を狙い撃ちにしたものです。翌年に慌ててルーブル合意で止めようとしましたが止まらず、投機バブルを引き起こしました。

プラザ合意(2) 経済はA+B+Cの足し算ですブログ
https://ameblo.jp/tasan-ame/entry-12596270279.html

そもそも、360円は戦後のレートであり、もともと日本は1ドル4円の超円高な国。復興が進むにつれ、本来の力を取り戻すと、360円の超円安攻勢をかけられることになります。固定相場制が耐えきれなかったのも当然です。それは敗戦国であるドイツも同じで、ドイツの復興は経済の奇跡、日本の復興は世界の奇跡と呼ばれました。


< 固定相場制の崩壊 >

崩壊した理由はもうひとつあります。それは固定相場制の物理的限界です。金とドルの交換が根本にありましたが、崩壊後に急激な円高になったということは、円が安すぎたということです。つまり、ドルからすれば、ドルが高すぎる状況でした。

繰り返しですが、ドルが高すぎると、アメリカは輸出が進まず、国民も輸出品を購入し、不況になります。輸出で稼げず、国民のドルも買い物で外国に流れる。ドルが国外に流れるということは、つまり、アメリカは金(ゴールド)を流出しているのと同じです。

その金(ゴールド)の量が物理的に少なくなり、一時交換停止となったのが1971年のニクソンショックです。そこで、金ドルの固定相場制は崩壊しました。日本の安すぎる円安も変動相場制になったことで是正されました。

そもそもを辿れば、経済規模は成長するものなのに、物理的な量の限界のある金(ゴールド)と、成長し続けるドルを固定していたので、制約が限界に達しました。

日本の明治維新も同じですね。小判などの貴金属貨幣の経済から、坂本龍馬、由利公正らの働きで太政官札が施行され、公札も紙幣へと認識が切り替わっていきました(それ以前から各藩では、藩札が流通し、江戸時代から紙幣の経験が蓄えられていました)。


< 続く固定相場制の崩壊 >

ポンド危機、アジア通貨危機、ポンド危機など聞いたことはあるでしょうか?これらはすべて固定相場制を狙われたものです。固定相場制とは、実は固定されていません。固定に見えるように、常時為替介入を続けている状態です。

1つ1つ考えてみましょう。実は円安に、自国通貨を安くすることは、やろうと思えば難しくありません。自分の国のお金は作れますからね。単純な話、自国通貨を2倍にすれば、通貨の価値は半分になりますので、例えば、1ドル100円ならば、1ドル200円となります。

あとはその作ったお金で、為替市場で外貨を買い取り、代わりに自国通貨を市場に流し込んで増やせばいいのです。買い取った外貨は「外貨準備高」となります。

しかし反対に、円高に、自国通貨を高くするには、限界があります。為替市場で、自国通貨を少なくすればいいので、自国通貨を回収する必要があります。今度は「外貨で」自分の国のお金を回収しなくてはいけません。ここで使われるのが、先ほどため込んだ「外貨準備高」です。


なので、自国通貨を安くするのはいいのですが、高くする介入には限界があります。そこをハゲタカファンドに狙われました。ポンド危機なら、ポンドを大量に市場に放出され、過剰なポンド安にされます。それでイギリスはポンド高にするために、外貨準備高を吐き出させられました。

これがもし変動相場制なら、無理して外貨準備を出して、為替を維持しなくても大丈夫です。固定相場制は必ず為替レートを守らないといけないルールのために、その脆弱性を狙われました。したがって、変動相場制に移行する国が増えています。

< いくらでも自国通貨安にできるのならば輸出はいつでも有利になる? >

できますが、相手国は赤字になり、怒りを買います。それに、関税もありますし、どの国も同じことができます。そうすることを通貨安競争といい、やらない国がどんどん通貨高になり、損をします。なお、戦前の日本が、1ドル1円から1ドル5円のように円安になりましたが、これもABCD包囲網をされるような「宣戦布告せず経済制裁する」ことの理由の一助にもなっているようです。


< 日本の外貨準備高は世界トップクラス >

繰り返しますが、日本は円高が歴史です。円安になることは日本が有利になることなので、世界は許さないでしょう。第一、日本の外貨準備高は世界トップクラスです。アジア通貨危機が起きたとき、日本は外貨準備高が足りない国を助ける側でした。

外貨準備高ランキング(1990年・2005年・2018年)
https://finance-gfp.com/?p=5697

どうして日本がこんなに外貨を持っているか?それは、為替市場で円を放出して、外貨を買って貯めていたからですね。それはひたすら円高にされるがゆえに、円を放出して、円をあふれさせ、少しでも円高にならないようにと抵抗してきたからと思うのですがいかがでしょうか?


< 日本は過剰な円安で破たんする‥返済不可能になるのか? >

焼野原の広がる敗戦国のような有様になれば、日本の為替レートが4円から360円になったように、急激な円安として現れるでしょう。円の価値が低くなったと。しかし、平時でそれはありえるでしょうか?

まずありえません。円安になったら各国が輸出されて困るでしょう。また、変動相場制であるため、ハゲタカファンドが売り浴びせても、為替レート維持目標もないので意味がありません。それに、他国を助けるほどの豊富な外貨準備高を持っている日本には、そこからの為替防衛も可能です。

日本の為替レートの下落を狙うくらいなら、他の固定相場制の残っている国を対象にした方がまだマシでしょうね。そうした意味でも日本円は強靭なので、基軸通貨のうちのひとつとして見られており、日本円の資産を買うことは安全資産と見られています。

リスク回避でなぜ日本円は買われる?『安全通貨』である背景を説明しよう
https://www.morningstar.co.jp/event/lecture/kanri/2016/ka20160906.html


< 出典 >
日本銀行、時系列統計データ検索サイト、外国為替市況FM08、09
https://www.stat-search.boj.or.jp/index.html

円相場 wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E7%9B%B8%E5%A0%B4

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